
退職を伝えても、引き止められたらどう断ればいいの?
「人手不足だから待ってほしい」「部署を変えるから残らないか」。看護師が退職を伝えると、継続勤務や退職時期の変更を提案されることがあります。
まず考えたいのは、その提案によって退職したい理由が解消するかどうかです。希望が叶うなら異動も選択肢になります。一方、退職の意思が固まっているなら、感謝とともに意思を明確に伝え、退職時期の話を進めましょう。

現役の看護師採用担当として、私の勤務先での対応も交えながら、引き止めへの向き合い方と断り方をお伝えします。
看護師が退職を引き止められる理由

退職理由を解決して働き続けてもらいたい
私の勤務先では、毎年の意向調査で退職の意向とその理由を確認しています。その際に検討するのは、退職を考えた理由が病院側で解決できるものかどうかです。
例えば、同じ病院内でも配属部署を変えることで、本人が希望する看護や働き方に近づけられる場合があります。また、私の勤務先のように急性期・回復期・訪問看護・有料老人ホーム・健診センターなどを運営する法人なら、事業所間の異動も選択肢になります。
ただし、すべての希望に応えられるわけではありません。本人の希望が叶い、法人側にとっても継続勤務のメリットがある場合に、調整可能な範囲で異動などを提案します。これは私の勤務先での例で、異動の選択肢や対応は職場によって異なります。
人員配置や引き継ぎのため時期を調整したい
退職そのものを受け入れる場合でも、シフトや引き継ぎの都合から、時期の調整をお願いすることはあります。私の勤務先でも、本人と相談しながら調整する場合があります。
ここで大切なのは、退職の撤回を求められているのか、退職日を相談されているのかを分けて確認することです。時期について相談されたからといって、退職自体を取りやめる話と受け取る必要はありません。

退職したい人を、あの手この手で引き延ばしても良い結果にはならないと考えています。本人の意欲や周囲への影響もあるため、意思が変わらない人を無理に引き止め続ける方針ではありません。
異動で解決できるかを考えたうえで、転職して希望部署を探す場合は、看護師の配属希望と希望部署の求人の探し方も参考にしてください。
退職の引き止めを断る伝え方と例文

残るか転職するかで迷う場合は、看護師の転職前に希望条件と優先順位を整理する方法を参考に、自分が変えたいことを確認してみてください。
以下は、退職の意思が固まっている場合の伝え方の例です。実際の理由や状況に合わせて使ってください。引き止めを断るために、事実と異なる理由を作る必要はありません。
なお、ここでの例文は現職への伝え方です。転職先の面接で聞かれた場合は、看護師の退職理由を面接で伝える方法と例文をご覧ください。
異動を提案されたときの断り方
まずは異動によって悩みが解消するかを確認します。残ることも検討できるなら、異動先・時期・仕事内容などを具体的に聞きましょう。それでも希望が叶わない場合は、提案への感謝と退職の意思を伝えます。
異動についてご検討いただき、ありがとうございます。ただ、今回の転職で実現したいことを改めて考え、退職する意思は変わりません。〇月末での退職に向けて、手続きを進めたいと考えています。
「人手不足だから待って」と言われたとき
協力できることと、難しいことを整理して伝えましょう。「後任が来るまで」という期限のない返事をするより、希望する退職日と、それまでにできる引き継ぎを具体的に示すと話を進めやすくなります。
人員の面で調整が必要なことは理解しています。ただ、私としては〇月末での退職を希望しています。その日までに引き継ぎを進めますので、具体的な進め方をご相談させてください。
給与や勤務条件の改善を提案されたとき
改善の提案を受けたら、退職理由が解消する内容かを判断します。残ることを検討する場合は、「いつから・何が・どのように変わるのか」を確認し、条件を書面などで確認できるようにしておきましょう。
条件についてご配慮いただき、ありがとうございます。ただ、今回は給与や勤務条件だけでなく、今後のキャリアも考えて決めました。退職の意思は変わりません。
以前、人材コーディネーターとして転職を支援していた際に、給与改善の提案を受けて転職を取りやめたものの、後から「実際には給与が上がらなかった」と相談された経験があります。改善の提案を一律に疑う必要はありませんが、内容が曖昧なまま判断しないことが大切です。
繰り返し面談されても意思が変わらないとき
これまで何度もお時間をいただき、ありがとうございます。ご提案も踏まえて考えましたが、退職する意思は変わりません。今後は退職日と引き継ぎについて、お話しさせていただきたいです。
面談のたびに違う理由を追加すると、何を解決すれば残れるのかという話が続くことがあります。理由を長く説明し直すよりも、検討したうえで意思が変わらないことを落ち着いて伝えましょう。
強い引き止めで退職の話が進まないとき

伝えた日と希望退職日を記録する
口頭で伝えた場合も、日時・相手・希望退職日・返答を記録しておきましょう。必要に応じて、メールなどで面談内容を確認します。退職届の提出先や手続きも、人事・総務に確認してください。
本日の面談でお伝えしたとおり、〇月末での退職を希望しています。退職の意思は変わりませんので、今後の手続きと引き継ぎについてご案内をお願いいたします。
師長で話が止まる場合は人事・総務に相談する
通常は直属の上司から伝えるのが基本ですが、面談を先延ばしにされる、看護部長への報告状況が分からないなどの場合は、人事・総務や看護部長に経緯を説明して相談しましょう。師長自身との関係が相談を難しくしている場合も、別の窓口を使って構いません。
実際に、当院への入職を予定していた看護師から、入職の1週間前に「現職を辞められず、入職を1か月遅らせたい」と相談されたことがあります。本人の説明では、3か月前から師長に退職を伝えていたものの、看護部長から「聞いていない」と言われたとのことでした。
師長に伝えた経緯を改めて看護部長に説明してもらったところ、最終的には予定どおり退職・入職できました。この事例から伝えたいのは、相手の意図を推測することより、いつ誰に何を伝え、どこまで手続きが進んでいるかを確認することの大切さです。
転職先への入職日に影響しそうな場合は、直前まで抱え込まず、早めに転職先の採用担当者にも相談してください。
「認めない」と言われたら契約と相談先を確認する
厚生労働省の説明では、期間の定めのない労働契約は、原則として退職の申し入れから2週間で終了します。「病院が認めない限り退職できない」というわけではありません。
一方、契約期間が決まっている場合の途中退職には別の取扱いがあります。自分の契約内容と就業規則を確認し、話が進まない場合は総合労働相談コーナーなどに相談しましょう。
直接話すことが難しい場合の相談先や、退職代行を利用する際の注意点は、別の記事で整理しています。
看護師が円満退職するための時期と順番

余裕があれば3か月前を目安に伝える
私が円満退職に向けた実務上の目安としておすすめするのは、退職希望日の3か月前です。シフトの調整、採用活動、引き継ぎなどを進める時間を取りやすくなるためです。
3か月前は法律上の一律の義務ではなく、早く伝えれば必ず円満になるという意味でもありません。就業規則の手続きを確認し、自分の事情に合わせて準備しましょう。体調や安全の面で働き続けることが難しい場合まで、無理にこの目安に合わせる必要はありません。
転職活動と退職の予定を合わせて考える場合は、看護師の転職時期と活動を始めるタイミングも確認しておきましょう。
まず師長に伝え、その後の手続きを確認する
- 直属の上司に面談の時間を取ってもらい、退職の意思と希望日を伝える。
- 看護部長への報告や退職届の提出先など、次の手続きを確認する。
- 退職日、最終出勤日、有休の希望、引き継ぎの予定を具体的に相談する。
- 同僚への周知時期を上司と相談する。
周囲に先に話が広まると、正式な話との食い違いが起こる場合があります。職場での周知時期は調整しつつ、困ったときに信頼できる人や相談窓口に相談することまで控える必要はありません。
退職する意思と時期の相談を分ける
退職の意思が固まっているなら、「辞めようか迷っています」と伝えるより、「退職することを決めました。時期について相談させてください」と伝えたほうが、自分の考えが明確になります。
時期の調整をお願いされた場合は、転職先の入職日や生活上の予定を踏まえて、対応できる範囲を伝えましょう。調整に応じる場合も、変更後の退職日と手続きを確認し、話を曖昧にしたままにしないことが大切です。
退職を引き止められない場合も気にしなくてよい

引き止められなかったことで、「自分は必要とされていなかったのか」と不安になるかもしれません。しかし、引き止めの有無だけで、あなたへの評価は分かりません。
私の勤務先では、本人の希望を叶えられる提案が難しい場合や、退職の意思が固い場合に、何が何でも退職を止めることはしていません。引き止められるかどうかを自分の価値の基準にせず、退職までに必要な手続きを進めていきましょう。
まとめ|退職の意思と時期を分けて伝えよう

- 異動などの提案は、退職したい理由が解消するかで判断する。
- 退職の意思が変わらない場合は、感謝とともに明確に伝える。
- 退職の撤回と、退職時期の調整を分けて話し合う。
- 話が進まない場合は、経緯を記録して人事・総務などに相談する。

円満退職を目指すことと、相手の要望をすべて受け入れることは別です。自分の希望を明確にしながら、引き継ぎなど協力できることを具体的に話していきましょう。
この記事を書いた人
カンタ|現役・看護師採用担当
看護師転職のコーディネーターを経験し、現在は神奈川県の医療法人で看護師採用を担当。「紹介する側」と「採用する側」の両方の経験をもとに、看護師の転職に役立つ情報を発信しています。



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