「看護師として長く働いてきたから、転職先でもその年数分の給料になるはず」
そう考えていても、実際の経験加算は想像と違うことがあります。これまで働いた年数と、転職先が給与算定に使う経験年数は、必ずしも同じではありません。
私は医療法人で看護師の採用を担当し、履歴書を基に給与を算定しています。以前は看護師人材紹介会社のコーディネーターとして、病院ごとに給与の決め方が違うことも経験してきました。
この記事では、経験加算の仕組み、職歴の伝え方、応募前と内定時に確認したいことを解説します。勤務先の実例は一例であり、すべての病院に共通するルールではありません。

看護師として働いた年数が、そのまま給料に反映されるわけではないんだね。

そうなんです。大切なのは、経歴を正確に伝えて、自分の場合の給与条件を確認することです。
看護師の転職で経験加算とは?

経験加算は、中途採用時の給与を決める際に、過去の勤務経験を反映する仕組みです。ただし、どの経験を、どの程度反映するかは病院・法人によって異なります。
「経験を考慮して給与を決定」と書かれていても、勤務期間をすべて同じように数えるとは限りません。また、経験加算が独立した手当として表示されると決めつけず、給与のどこに反映されるのかを確認しましょう。
前職の給与を引き継ぐ仕組みではない
経験加算があることと、前職の給与が保証されることは別です。転職先が自院の給与基準に沿って算定する場合、以前の年収にそのまま合わせるわけではありません。
私の勤務先は近隣と比べて給与水準が高いと感じていますが、それでも大学病院などからの転職では、前職年収に届かないことがあります。経験年数だけでなく、もともとの給与水準や手当・賞与の違いも関係するためです。
経験加算が多ければ高給与とは限らない
給与の土台が違う病院同士では、加算される年数だけを比べても、どちらの給与が高いかは判断できません。
また、入職時の経験加算に上限を設ける病院もあります。上限がある場合は、長い職歴のすべてが入職時の加算に反映されるとは限りません。入職時の加算上限と、入職後の昇給の扱いは分けて確認してください。
給与水準の高い職場の探し方や、給与アップを目指す転職の進め方は、看護師が給料を上げる方法と求人の選び方で詳しく解説しています。
経験年数の数え方は病院で違う

経験年数の算定で、全国の病院に共通する一つの計算式を使うことはできません。私がコーディネーターとして関わった病院でも、数え方には違いがありました。
| 算定の考え方 | 実務で経験した違い |
|---|---|
| 免許取得後の経過年数を基準にする | 免許取得時期から経験年数を考える病院があった |
| 実際に勤務した期間を基にする | 在籍・勤務していた期間を確認して算定する病院があった |
| 病院の機能を区別する | 急性期・療養・精神科などによって扱いが違う病院があった |
| 病院の機能を区別しない | 病院での勤務経験として同じように数える病院もあった |
これらは私の実務経験に基づく例です。応募先がどの方法を採っているかは、別途確認が必要です。
「看護師○年目」と実際の勤務期間を分ける
免許取得から何年たったかと、その間にどのくらい働いたかは違います。「看護師10年目です」という情報だけでは、給与を正確に算定できるとは限りません。
月単位で算定する病院もあるため、各勤務先の入職・退職年月を整理しておきましょう。現在の勤務先についても、退職予定や転職先の入職予定が決まっている場合は、その予定を伝えておくと確認しやすくなります。
病院名だけでなく病棟の機能も関係する
急性期、回復期、療養、精神科など、前職の病院機能によってカウント方法が異なる場合があります。
同じ法人の系列病院でも、急性期病院で勤務していたのか、療養・精神科の病院で勤務していたのかによって扱いが変わることがあります。
また、急性期病棟と療養病棟の両方を持つケアミックス病院では、病院名だけでは判断できません。実際にどの病棟で働いていたかを確認することもあります。
これは給与算定上の区分の話です。その経験の価値や、看護師としての能力の優劣を一律に決めるものではありません。
非常勤・派遣も同じ扱いとは限らない
常勤、非常勤、派遣などの雇用形態によって、経験の算定方法が異なる場合もあります。「同じ病院で同じ期間働いたから、加算も同じ」とは限りません。
履歴書に雇用形態が書かれていない場合、私は面接で「こちらは常勤でしたか、非常勤でしたか」と確認します。自己判断で換算せず、実際の雇用形態と期間を伝えてください。
育休・休職や准看護師期間の扱い

働いていなかった期間や、別の資格で勤務した期間についても、自分で一律に引いたり、足したりせず、応募先の扱いを確認することが大切です。
育休・休職を差し引かない運用もある
私の勤務先では、育休・休職期間を在籍期間から差し引く算定はせず、その病院に勤めていた期間を基に考えます。
ただし、これは勤務先の運用です。他院でも同じとは限りません。また、退職してから次の勤務先へ入職するまでのブランクと、在籍中の育休・休職は区別して考えてください。
書類や面接で確認された内容には正確に答え、不明点は担当者に確認しましょう。
准看護師期間は加算されない場合がある
正看護師として採用される場合、准看護師として働いた期間が、正看護師の経験年数として加算されるとは限りません。
私の勤務先では、給与算定上、准看護師と正看護師を別の職種として扱い、准看護師の勤務期間は正看護師としての経験加算に含めません。
実際に、長く勤めている准看護師の方から「正看護師の資格を取ると給料はどうなりますか」と質問されたことがあります。私の勤務先の運用では正看護師1年目の給与になるため、それまでの准看護師としての給与より下がるケースがあります。
他院への転職についても、コーディネーター時代には、准看護師期間を加算しない病院に多く接しました。ただし、これは当時の実務上の経験であり、全国の病院の割合を示すものではありません。

正看護師の資格を取れば、必ずすぐに給料が上がると思っていたよ。

給与の切り替え方によっては下がることもあります。資格取得後や転職後の条件を、先に確認しておきたいですね。
資格取得後も同じ勤務先に残る場合、別の病院へ転職する場合のどちらでも、取得後の給与と准看護師期間の扱いを確認してください。
正確な経験加算には職歴の整理が必要

私の勤務先では、採用担当である私が履歴書を基に給与を算定します。そのため、履歴書の情報が足りなかったり、書類同士で記載が違ったりすると、追加の確認が必要になります。
在籍期間・雇用形態・配属先をそろえる
給与算定の確認に備え、次の情報を整理しておきましょう。
| 項目 | 整理しておく内容 |
|---|---|
| 在籍期間 | 各勤務先の入職・退職年月 |
| 雇用形態 | 常勤・非常勤・派遣など。途中で変わった場合はその時期 |
| 配属先 | 病棟・外来など、実際に勤務した部署と期間 |
| 病院・病棟の機能 | 急性期・回復期・療養・精神科など、分かる範囲 |
| 資格取得時期 | 正看護師・准看護師それぞれの資格取得時期 |
書類の食い違いは修正する
履歴書と職務経歴書で、在籍期間が違うことは実際にあります。私は面接後に、給与算定に必要なため正確な情報を改めてお願いすることもあります。
提出前に両方の書類を並べて、年月や雇用形態に食い違いがないか確認してください。提出後に誤りに気付いた場合も、そのままにせず担当者に連絡しましょう。
書類全体の作り方は、看護師の履歴書・職務経歴書の書き方ガイドで確認できます。
応募前に給与の目安は分かる?

「面接を受けてから希望年収に届かないと分かったら困る」という方もいると思います。応募前の給与確認は、病院に計算してもらう場合と、紹介会社が過去の実績から見込む場合を分けて考えましょう。
病院が応募前に計算してくれる場合
私の勤務先では、紹介会社から経歴を伝えてもらい、正式な応募前に概算給与を計算することがあります。
また、最低希望年収を事前に聞いていて、算定した金額が数十万円ほど下回る場合には、紹介会社へ「このくらい差がありますが、それでも選考を続けるご意向はありますか」と確認することもあります。
一方、コーディネーター時代の経験では、応募・面接前の個別計算は対応してもらえない病院も多くありました。問い合わせれば必ず計算してもらえるわけではありません。
紹介会社の実績データから分かる場合
病院が事前計算をしなくても、紹介会社には、過去に紹介・入職した方の給与データが蓄積されていることがあります。
私のコーディネーター時代には、そのデータを基に、病院へ個別に問い合わせなくても給与の目安を算定できることが多くありました。詳しい経験加算の基準が公開されていなくても、給与水準を見込める場合があるということです。
ただし、紹介会社が持つ情報の量や新しさは異なります。給与制度が変わっている可能性もあるため、見込み額を正式な提示額として扱わないようにしてください。
| 金額の種類 | 意味・注意点 |
|---|---|
| 紹介会社による見込み額 | 過去の入職実績などを基にした目安。本人について病院が計算したとは限らない |
| 病院による概算額 | 本人の経歴を基にした事前計算。正式提示までに変更がないか確認する |
| 正式な提示額 | 内定時などに本人へ提示される給与条件。内訳や前提条件も確認する |

紹介会社から聞いた金額でも、病院が私の給与を計算したとは限らないんだね。

はい。「病院に確認した金額ですか、それとも過去の実績からの目安ですか」と聞くと整理できますよ。
紹介会社への確認例
経歴を伝えたうえで、次のように相談すると確認事項がまとまります。以下は相談時に使う例文です。
この職歴・雇用形態で転職した場合の給与の目安を知りたいです。病院への概算確認はできますか。難しい場合は、過去の紹介実績から分かる範囲を教えてください。基本給・固定手当・想定年収の内訳と、夜勤回数などの前提も確認したいです。
最低限必要な額面年収がある場合は、その金額も先に伝えておきましょう。直接応募の場合も、病院の採用窓口に概算確認が可能か相談できますが、対応範囲は応募先によって異なります。
応募方法を迷っている方は、直接応募と転職サイトの違いも参考にしてください。
自分の経歴で、どのくらいの給与を見込めるか相談する
在籍期間・雇用形態・配属先を伝え、給与の目安を確認してみましょう。病院が計算した概算なのか、紹介会社の実績からの見込みなのかも確認してください。
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内定時は正式な給与条件を確認する

私の勤務先では、内定の連絡と一緒に正式な給与を提示しています。応募前に聞いた目安だけで判断せず、実際に提示された条件を確認してください。
給与額から加算年数を逆算しない
私の実務経験上、経験加算の詳しい算定方法は、公表されていないことが多くあります。給与額だけを見て、どの勤務先の経験がどの程度反映されたのかを判断するのは難しいものです。
「この給与なら経験が何年分しか加算されていないはず」と自己判断するより、まず提出した職歴が正しく伝わっているかを確認しましょう。説明を受けられる範囲を聞くことはできますが、細かな計算式まで必ず分かるとは限りません。
基本給・手当・年収の前提を見る
正式提示では、次の点を確認してください。
- 基本給と固定手当: それぞれの金額と支給条件は何か。
- 想定年収の前提: 夜勤や残業をどの程度含んでいるか。
- 賞与: 何を基に算定し、初年度はどうなるか。
- 概算との差: 事前の説明と違う場合、その理由は何か。
- 職歴の訂正: 追加確認した経歴が最終算定に反映されているか。
経験加算の年数だけでなく、実際の給与と勤務条件に納得できるかを確認して、入職を判断しましょう。
経歴を正確に伝え、提示給与を確認しよう

看護師の転職で経験加算を確認するときは、次の順番で進めると整理できます。
- 在籍期間・雇用形態・配属先・資格取得時期を整理する。
- 応募前に給与の目安を確認できるか相談する。
- 聞いた金額が、紹介会社の見込みか病院の概算かを確認する。
- 内定時の正式な給与と、その内訳・勤務条件を確認する。

経験加算の方法が違えば、同じ経歴でも提示給与は変わります。職歴を正確に伝えたうえで、自分に提示された条件を確認してくださいね。

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